高校の同級生2人と1年ぶりに会い、上野でお酒を飲んだ。
3人とも滋賀県の出身で、高校時代の思い出話に花を咲かせた。
近況報告が3割で、残りの7割は思い出話。
前に会った時もそんな感じで、おそらくこれからも、たまに会っては思い出話をして昔を懐かしむのだと思う。
とは言え、うちらはまだ40歳。思い出話の割合がちょっと多くないか?
思い出にどっぷり浸るのは60歳、70歳を過ぎたあたりからにして、今はまだ、これから何をやろうとか、そういう話を中心にしてもいいのではないか?
3人で乾杯して最初の1時間くらいはそう思っていた。
しかし今回、新しい発見があり、まだ40歳だけど、これからは何年かに1回でいいから、定期的に集まって、思い出話をしておいた方がいいと思うようになった。
どんな発見があったかというと、記憶がところどころ完全に消えていたのだ。
これまでは、最初忘れていたとしても、誰かが話しているのを聞いているうちに、
「あぁ、そんなこともあったなぁ」と思い出すことができた。
しかし今回、話を聞いていても、全く思い出せないエピソードがいくつかあった。
私が全く思い出せなかったエピソードを1つ紹介すると、
社会人になったばかりの頃、滋賀県から上京し、東京に住み始めた同級生何人かで、ちょっと背伸びをしてみようと、赤坂のホテルオークラのバーに飲みに行った。
高級ホテルのバーなのでお会計も相応に高く、当時、フリーターをしながら演劇をしていた私はお金がなくて、国家公務員をしていた友人に10万円近いお金を借りて支払いをしたとのことだった。
この話を2人から聞かされた時、当時のことを全く覚えていないし、思い出すこともできないことに驚いた。
「高級ホテルのバー」「10万円近いお金を借りる」
こんなにパンチのあるエピソードを覚えていないなんてことがあるのだろうか。
2人が言うところによると、私もその場にいたそうである。当時の風景が頭の中に全く思い浮かばないのでいまだに半信半疑だが、2人がそう言うのだからいたのだろう。
10万円借りたという過去をなかったことにするために、意図的に記憶を消したのかもしれない。
もしくは、若年性認知症など、私の脳になんらかの異常があるのではないかと心配になったが、他の2人も同様に、忘れてしまって、聞いても全く思い出せないエピソードがそれぞれにあることがわかった。
覚えていること、いないこと。
同じ場所で、同じ時間を過ごしていても、1人1人、記憶は微妙に異なるようだ。
だからこうして、何年かに1度でいいから集まって、思い出話をしながら記憶のメンテナンスをしておくことで、60歳70歳になってから「あの時あんなことがあったね」と懐かしく楽しめるエピソードをより多く残せるのかもしれないなと、滋賀県出身の友人たちと話をしていて思った。