思ってた感じとは違うけれども
2010年3月16日、環状線の大正駅を降り、大阪ドームへやってきました。再びAC/DCのライブを観る為に。この時は既に京セラドームだったのか、定かではありませんが大阪ドームで書いていきます。
前回のさいたまスーパーアリーナのライブの時と会場周辺の様子が明らかに違っていました。大阪ドームに近づくに連れて、アルコール濃度が高めのゴキゲンな人々が増えて行きます。アンガスのコスプレをしてる人もいます。グッズのツノを会場の外でもお構いなしに色んな人がつけまくりです。どっかで対バンしたことあるなぁ…と見覚えのあるバンドマンが輪になって酒を飲んで騒いでいます。みんなAC/DCを待ちきれない想いを発散しています。
コレコレコレコレ!!!
この光景こそが僕が当初から思い描いていた、AC/DCのライブがある会場の外の光景です!やっぱり、関西の人はノリが良いのか?まあ、そうはいってもさいたまスーパーアリーナの周りを隅々まで巡回したわけではないので、もしかしたら、さいたまの会場の外でもこのような光景はあったのかもしれません。
僕もコンビニで買ったアルコールをドンドン身体に放り込んでいきます。この時点で異様な雰囲気に飲まれ、彼女は若干引いていました。そして後輩カップルは、意外にもこの空気を楽しもうと、僕に負けない勢いでアルコールを吸い込んでいきます。その意気や良し!僕も楽しくなってきましたが、彼女を置いてけぼりにしたら可哀想なので
僕『難しく考えずお祭りに来たと思えば良いで〜』
彼女『うーん、でも私、曲も全然知らんしなぁ』
僕『AC/DCの曲は初めて聴く人にもわかるようになってるから大丈夫やで〜』
彼女『そうなん?……。』
何故来たのか?とか、ちょっとは曲聴いて来たらよかったのに。という根本的な疑問、意見は置いといて、アレやコレやとテンションをあげようと頑張るのですが、あまり彼女には響いていないようでした。でも、今日はまだまだこれからやし、過度に心配するのも逆にウザいと思うので、引き続き会場の外の光景を楽しんでいると…
僕『あっ!きよっさんや!』
そうです。以前紹介した世界中にAC/DCを観に行っている猛者のファン「きよっさん」を発見しました。ブログで「日本のライブも全日参加する」と書かれていたので、もしかして会えるんじゃないかと思っていたので、めちゃくちゃ嬉しかったです。僕は近寄り
僕『ずっとブログ読ませて頂いてました。お目にかかれて光栄です!』
と握手をさせて頂きました。僕の中で有名人に会えたような、すごい盛り上がった出来事なのですが、後から聞いた話によると、彼女は見知らぬ奇抜な格好をしたオッサンに嬉しそうに握手をしてもらってる僕を見て、また若干引いたそうです。そして、実は後から聞くまでもなく、きよっさんと握手を交わし、戻ってきた時、彼女が引いていたのは顔を見れば一目瞭然でした。熱量の差が産み出す悲劇…、何とかせねばと思いつつ、彼女に気を使って楽しめなくなるのも嫌だなあとも思いました。揺れる想い。
気を取り直して、遂に大阪ドームの中に入りました。会場内の熱気はさいたまも大阪も変わりません。AC/DCを待ち侘びる人々の熱気が物凄いです。やっぱりドームは広いなあと辺りを見渡すと、ある異変に気付きます。
「スタンド…ガラガラやん!」
公演が2,3日前に迫った中で取ったチケットがアリーナ席だった時に感じた不安が的中しました。3/14のさいたまの追加公演も売り切れなかったらしいし「僕が思っているよりAC/DCは日本で人気がないのかな?」という疑念を確信へと後押しする残酷な現実を目の当たりにしました。
そして、更にショックなことがおきます。スタンドにいる一部のお客さんがスタッフに誘導されてアリーナ席へ降りてきます。そしてスタンド席全部ではないですが、お客さんがいなくなった所に黒い布がかけられていきます。なんとも寂しい光景です。
僕も馬鹿じゃないので
「次、AC/DCのツアーがあっても日本来んのちゃう?」
と思いました。後日、きよっさんのブログを拝見すると、この日大阪ドームの空席率は、今回のツアーで1番だったそうです…。
この事実が今後どういう事態を産むのか?それはひとまず喫茶野郎とAC/DCの物語を読んで頂いてから、そのあと存分に書いていきます。
話を戻します。ライブが始まりました。
空席の多さとライブの盛り上がりは全くの別問題です。これは僕の体感と座席の位置も大いに関係すると思いますが(さいたまはスタンド席でした)関西人特有の気質…いちびりが多いこと多いこと。AC/DCのお決まりのコールには大げさなくらい声を張り上げたり、決してバンドに向けてではなく、周りの人を笑かして目立ってみせるぞといった類の野次がバンバン飛び出します。
ライブ内容についてはさいたまと全く同じなので割愛しますが、こんなに盛り上がる事があるか?というくらい盛り上がりました。僕も途中から彼女が引くからとか関係なく、自分を曝け出して盛り上がりました。つまらない見栄やプライド、気遣いの為にコソコソするのは絶対もったいないと思い直したからです。後輩カップルもめちゃくちゃ楽しんでいます。彼女は楽しそうにはしてましたが、真意はわかりません。因みに、これが直接の原因ではないですが、数ヶ月後に別れました。
そして、遂にfor those about to rock(we salte you)のリフがアンガスによって掻き鳴らされました。終わりの合図に再び頬を伝う涙。今回はもう隠そうとしなかったので後輩カップルに見つかり爆笑されました。僕も泣きながら爆笑しました。彼女は恐らく引いていたでしょう。でも、関係ありません。これで本当に最後なのです。またAC/DCが日本にやってくる保証なんて一切ないのです。涙で視界は滲んでいても、少しでもこの興奮を光景を最後まで目と心に焼き付けようとしました。
全てのセットリストが終わり、会場を出ても僕はボーッとしていました。
「これで本当に終わったんだ」
待ちに待ったAC/DCのライブを遂に体感し終えて、満足感と喪失感が胸に去来します。相反するものが、心に同居する奇怪さと心地よさ。まだまだドーム周辺では今日のライブを観たお客さんが酒を飲み、騒いでいます。みんな、この祭りの余韻に浸りたいのでしょう。僕も勿論、この場から離れたくありませんでした。離れたらいよいよ本当の終わりを迎えるのがわかっていたからです。
AC/DCの新譜が出て、その良さに感動し、来日するのかしないのかでソワソワして過ごした日々、来日が決まってからの盛り上がり、ライブを目前に控えた時の早く観たいという想いと、もうちょっと現実にライブを観るまでの過程を楽しみたい、という贅沢な心の矛盾。そして、実際にライブを観た時の感動。生で観るAC/DCのかっこよさ。更にどうしても、もう一度観たくて、予定になかった大阪ドームのチケットを取って観たライブ。
それらがここを離れる事によって、その瞬間から今の進行形のリアルではなくなり、すべて過去の思い出になるのです。悪あがきしたいと思いました。まだこの幸せな酔っ払い達を観て、AC/DCの余韻に浸っていたい、何ならそうする事によって、後夜祭みたいなものでも始まらないかなとすら思いました。
「もう帰ろうや」
そんな想いもむなしく、無情にも彼女が言いました。
「せやな、今日は付き合ってくれてありがと」
そう言って帰路に着きました。
今日のAC/DC
AC/DC-let there be rock(ロックよ永遠なれ)