(⑥の記事の続きです)
下北沢カレーフェスを始めるきっかけとなったイベント「下北沢カレー王座決定戦」がどうやって始まったか、具体的に書いていく。
2011年当時、下北沢にはdet2(デッツ)さんという“ひげもじゃ”の人がいて、私の周りの人からは「カレーの神」と呼ばれていた。
そんなカレーの神、デッツさんにカレーイベントの開催を頼まれたことがきっかけだった。
その頃、私は無職FES(フェス)というイベントを始めていて、2011年2月に第1回、4月に第2回、8月に第3回と、半年のうちに3回の無職FESを開催していた。
第3回無職FESでは会場を3つ(バグハウス、シモキタオープンイノベーション、下北沢サウスパーク内“海の家”)借り、会場を行き来できる少しだけフェスらしいイベントをした。
会場の1つでは路上生活をしている方をゲストに呼んでお話を聞く企画も開催し、後のホームレスBARの原型となった。
そんなイベントをやっている様子を神(デッツさん)も見てくれていたようで、第3回無職FESが終わった9月頃、下北沢のビッグベン(1Fにファーストキッチンがあるビル)のあたりをあてもなくぶらぶら歩いている私に、タイヤの細い速そうな自転車に乗った神が声をかけてくれた。
神もまた、私がイベント会場としてよく借りしていたバグハウスの常連客の一人で、少しだけ面識はあったが、2人でしっかり話したことはないくらいの関係性だった。
1度、下北沢ブロイラーのイベントで神が作ったポークビンダルーという豚肉のカレーを食べさせてもらい、欧風カレーとはまたタイプの異なる、初めて食べる味のカレーだったのでなんと説明したらいいかよくわからないが、おいしいと思ったのは覚えている。
2011年(か2010年)に食べたポークビンダルー。おいしかった。
そんな神に下北沢の路上で声をかけられ「今からちょっと飲みにいかない?」と誘われ、特に用事もなかったので、そのまま飲みに行った。
46ma(シロクマ)という裏路地にあるカウンター7席のみの小さくておしゃれなバーだ。
そこで神からカレーイベントの企画を依頼され、カレー対決イベントを開催することになった。
(ちなみに当時、北沢川緑道と茶沢通りが交差するあたりにあるお店でカレー対決イベントが開催されているという噂は聞いていた。参加したことはないのでどんなイベントだったかはわからないが、告知文に「汚れても大丈夫な服装で来てください」と書いてあり、どんなイベントなんだろうと気になっていた。※下北沢経済新聞の2011年8月5日の記事を発見。2011年8月7日に第19回カレー大会という催しがBAR LAST CHANCEで開かれていたようだ)
神がカレーイベントの開催を依頼した理由は、神の弟子の“じろー”さんのカレー作りの技術がなかなか上達せず、どう指導していいかわからず困っていて、上達のきっかけづくりとしてカレー対決イベントをしてほしいということだった。
その話をカウンターの中で聞いていた46maのオーナーのいくさんが、以前、三軒茶屋のカレー対決イベントで優勝したことがあり、カレー作りに自信があるということでイベントに参加を申し出てくれた。
その後、会場を借りるバグハウスにて、ランチタイムに間借りでカフェ営業をしていた“しゅーぞー”さんにも参加を依頼し「神、じろーさん、いくさん、しゅーぞーさん」の4人によるカレー対決イベントを開催することとなった。
神からの依頼ということで、ちゃんとしたイベントにせねばと考え「下北沢カレー王座決定戦」という仰々しい名前にした。
私の中では下北沢のカレーの神が出場するイベントだから、そこまで言い過ぎではないかなと考えていたが、中身としてはすごく内輪の、身内感のある小さなイベントだった。
デッツさんがどういう経緯で下北沢のカレーの神と呼ばれるようになったかは知らないが、実際、神の作るカレーはおいしかったし、下北沢のいくつかの有名店のカレーのレシピを神は指南していたそうだ。
第1回下北沢カレー王座決定戦はキャパ20人ちょっとのバグハウスに1日で210人のお客さんが来てくださって大盛況だった。
ただ、イベント開催の1週間くらいまでチケットが全然売れていなくて、これはまずいと思い、下北沢のお店を1軒1軒まわり、チラシをおかせてもらって宣伝をした。
その様子を見ていた下北沢の不動産屋、有限会社ウィルステージのSさんが自社のブログにイベントのことを好意的に書いてくれて嬉しかった。
Sさんはその後もお店の前の自販機にカレーフェスのポスターを貼らせてくれたり、色々と協力してくれた。
カレー王座決定戦のチケットは1500円でカレー4種類と1ドリンク付き(お酒も注文可)というかなり安い価格設定にしたのだが、それでもなかなか売れなかった。
最終的には46maのいくさんが沢山チケットを売ってくれたのだと思う。
カレーが売り切れるほどにお客さんに来ていただけて本当によかった。
いくさんが呼んだお客さんが多かったが、対決の結果に影響が出ないよう、誰がどのカレーを作ったかわからないようにして、4種類のカレーを同時に提供し、一番美味しかったカレーに1票入れてもらった。
普段からカレーを出しているお店のカレーだと、誰の作ったカレーかすぐに分かったと思うが、いくさん含め、普段お店でカレーを出していない4人が作った4種のカレーなので審査の公正さはある程度ちゃんとしていたと思う。
実際、私も4種類食べたが、誰がどのカレーを作ったかわからない状態で食べて投票することができた。
イベントは3部制で、第1部終了時点ではいくさんがリード。
第2部でデッツさんが逆転したが、第3部でいくさんがさらに逆転し、優勝した。
おおまかにはそんな流れで、かなりの接戦だった。
イベント後にいくさんに聞いた話では、他の3人のカレーが甘めの味付けだったので、イベントの途中で辛さを足して味を変えたとのことだった。
対決の途中で相手の様子を見て、臨機応変に味を変え、勝つ。ライブ感のある対決だったことにわくわくしたし、いくさんの勝負強さに感動した。イベントが無事に終わり、安堵感と同時に高揚感があった。
カレーって人気があるんだなぁと思ったし、翌年はこれをもっと大きな規模でやりたいと思った。
会場がバグハウス1店舗だけでは200人が限界だが、会場が100店舗あれば2万人呼べるのではないか。
当時、会社の売り上げ目標として一般的に言われる来期は200%(2倍)、300%(3倍)を目指すみたいな数字がすごく嫌いで、日々一生懸命頑張った結果が100%であるのに、簡単に200とか300と言わないでほしいよなと思っていた。
ただ、2007年に橋下徹さんが「(大阪府知事選挙に)2万パーセント出ない」と言って(結局出た)のが記憶に残っていて、翌年の動員目標を1万パーセント(100倍)にするというのはリアルじゃない、現実味がない数字な感じがして、逆にチャレンジしてみたいと思えたので、「来年は2万人呼ぶ」という目標を立て、その方法としてカレーフェスティバルを構想するようになった。
(⑧へ続く)
全部で⑪まであります。続きを一気に読みたくなったらnoteもあります。