アンガス・ヤングと瓜二つの音を鳴らすギタリストはサクラマサチカ君(当時河内REDS、現ムステインズ)といって、AC/DCについてめちゃくちゃ色んな事を語り合いたかったけど、当時、何の接点もなかった僕がいきなり凄い熱量でAC/DCの事を熱く語り始めても、きっと僕がAC/DCがどれだけ好きか伝わらないし(サクラ君がそれを受け止めてくれるほどAC/DCを好きだとしても)とにかく今日はサクラ君のギターに感動したと伝えようと決めました。

チャンスはライブ後の打ち上げの最後の方にやってきました。もうほんと一言だけ

「ギターの音感激しました。アンガスの音そっくりで…僕、AC/DCが好きで…」

「あ、ありがとうございます」

あまりにも地味過ぎて、恐らくサクラ君にとっては良く言われてるであろう言葉だし、何の印象にも残らない会話だったろうなと思いました(現に彼は覚えていませんでした)。

でも、僕は満足でした。もしAC/DCのコピーバンドをやるなら絶対サクラ君がアンガス役がいいなぁ、と楽しい想像をしたりしました。

それから、またも時は流れ2018年、2019年、そして世の中が一変した2020年がやってきます。

そうです。世界がコロナ禍に突入します。

僕はバンドもやってるし、喫茶店もやっています。モロにどちらも影響を受けました。ライブはなくなり、お店に人が来なくなりました。それまで毎月毎日、真っ黒だった予定帳の予定はことごとく消え去り、緊急事態宣言が出されたらお店を休業する事態に追い込まれました。

こんな時だからこそ出来る事はなんだ?

後ろ向きになっても仕方ない、そんな事をバンド、喫茶店、両方からの視点でそんな風に考える日々を過ごしました。全く体験した事ない日々に困惑し続けながら、試行錯誤を続けます。

そして色んな事が僕自身にも、僕の周りでも活発に動き始めました。まずライブハウスでは配信という新たな文化が産まれました。配信自体は今までもあった文化ですが、ライブハウスが本気で向き合うのはコロナがきっかけでした。みんな、あーでもない、こーでもないと四苦八苦しながら『良い映像、音』を届ける努力をしました。

今ではライブハウスによってクオリティに差はあるものの「配信ライブ」は当たり前のものとなり、ライブハウスの楽しみ方に多様性を生み出しています。

僕のやっているバンドではライブができない代わりに、YouTubeで色々な事をやってみました。メンバー間で直接、顔を合わさずに、それぞれが素材を撮ってきて、それを使って一本のMVを作ったり、世界中のデュエットソングを歌ってみたり、スタジオライブをやったり、飲み会の生配信をしたりしました。どれも全然バズりませんでしたが、今まで違うカタチでバンドメンバーが各々と向きあうようになり、バンドの一体感が増したように思います。

お店では、まず出来るだけ安心して、そして快適にお店に来て過ごしてもらえるように、店内をつくり変える事に注力しました。コロナ対策で、店舗にとって何より重要なのが換気です。窓を開け放して換気扇をフル回転で営業しなければなりません。春と秋に関しては問題ないのですが、夏と冬が頭を悩ました。

夏は冷房をガンガンにかけ、大量の扇風機を導入し、それを店内の至る所に設置し暑さを感じさせる事ないように工夫しました。冬にも暖房はガンガンにし、大部屋用の石油ストーブを設置し、それでもフォロー出来なさそうな窓際には電気ストーブを置きました。おかげで電気代がエゲツない事になりましたが、出来るだけ安心して快適に過ごしてもらう為の必要経費と思えば安いものです。

あと「店内ではこういった対策をしています」という宣伝の為にインスタライブを慣れないながらもやってみたりしました。後々、テレビの取材に繋がったり、新たに興味を持ってもらう人も増えて、やって良かったと思っています。

その他には、店舗だけでの収入では賄えないので、通販サイトをオープンさせたり、出来る事はなんでもしました。

そして最後に僕のことです。僕自身コロナで様々な予定がなくなり、自由な時間が増えました。寝る時間も増えました。そこで気づいたのですが、それまでの生活は睡眠時間が少なく、店の仕込みをしながら立ったまま寝てしまったり、今にして思えば異様な生活を送ってたのです。それに気づけたのは良い点でした。

しかし、だからといって、このままなんとなく過ごしていたら、コロナ禍が終わり、次の段階へ世界が動き始めた時、コロナ禍が始まった時と全く変わっていない、むしろ劣化している自分を容易に想像できました。

なので、僕は1日に絶対やらなければならないルーティンを自分に課しました。自分の担当楽器の練習、歌の練習、曲づくり、そして前から習いたいと思っていた中国語の勉強を1日のルーティンにしました。出来てない日もありましたが、今日まで殆どの日をサボる事なく続けられています。

こうして、何度も何度もコロナに翻弄され、理不尽な思いをする事もありましたが「負けてたまるか!」と色んな事に挑戦し、その精神と努力を継続させ生活は続いてきました。

まだまだ、色んな面で苦しいことは沢山ありますが、少しずつ日常を取り戻すべく、飲食、ライブハウス、演劇、スポーツと影響を受けた分野の人々の戦いは続きます。

しかし、いつの日かコロナ禍も終わります。そん時は色んな人と思い切り喜びを分かち合い、苦労を労いたいです。その日が楽しみです。

いつの間にか話が思いっきりズレてしまいました。コロナの事をチョロっと書こうと思っただけなのに…^_^

話しを戻します。

コロナ禍により様々な規制が入ったり、緩和されたり、それに振り回されるカタチでライブハウスでも、入場者数を制限したり、無観客で開催したり、最悪の場合イベント中止となったという情報がSNSで多く見られました。

そんな不安定な状況の中、僕が普段からお世話になっている登山さん(京都を中心に全国で活動する、現存する唯一のアドベンチャーロックバンド「私の思い出」のボーカルです)から驚きのお誘いを頂きます。

「ちょっとこの状況下でどうなるかわからんけど、AC/DCのコピーバンドやらへん?」

再び、運命の歯車が動き出す音が聞こえました。

今日のAC/DC
AC/DC -Shot In The Dark

※2020年11月にリリースされたアルバム「POWER UP」より(2017年にマルコムが亡くなってから初めて出されたアルバムのタイトルがPOWER UPという所にAC/DCをらしさを感じます)

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